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古い、古い言い伝え。
それは、バードの歌う歌であったり、また教会の中に保存されている一冊の本であったり
おとぎ話のように語られている『お話』。
この世界の中心には世界樹と呼ばれる大きな樹が存在していて、それはユグドラシルと呼ばれていた。
世界の理、定義 命の源であり真理を司るとも呼ばれるその世界樹は、その一葉で死者を蘇らせることも、又人々が憧れてやまない不老の知識を得ることも出来るという。
その古い『お話』の中に虹の滴と呼ばれる子供の話がある。
この世界に生まれ落ちる際、世界樹の滴を浴びた魂はその恩恵を受け、銀の髪と虹の瞳を持って生まれてくる。
その魂を持つ者を手に入れることができれば、どんな願いも叶うという。
「っていう、お話があるの知ってる?」
乾いた空気とざらついた砂の町の片隅にある薄暗い小さな酒場。
宵闇堂と呼ばれるギルドのたまり場に突如現れそう皆に問いかけたのは、アシェと呼ばれるプリースト。
本名はアルシェという。
17歳になったばかりの彼は、銀の髪ではあるが先ほどのお話とは違い、春の空のような澄んだ水色をしていた。
「そういうお話があるのは知ってるけどね、君まさかカラーコンタクトでも入れてそのお話の主人公にでもなろうっていうのかい?」
やれやれという風体で答えるのはハイプリーストの衣装を身に着けた青年。
「確かに君の髪は見事な銀髪だけどね、やめたほうがいい、その『お話』にはいろいろな尾ひれはひれが付いているんだから」
一応の心配をしてくれているのか、馬鹿にしているのかは不明だが、そう言葉を投げられれば
「違うよ!そんなこと僕はしないよ!だって僕の目はゲインが綺麗だって言ってくれるもん!隠したりしたらもったいないじゃないか」
「はいはい、何?ゲインとの惚気の前ふり?そういうんだったらお前さん自分のギルドのたまり場に行きなさいよ」
先ほどのハイプリースト、この酒場兼とあるギルドのたまり場である宵闇堂のマスター。
グリフフォード=ガロニーフォ 通称G2と呼ばれることの多い男はアシェの友人の中でも、変わり者の一人だった。
そもそも、アシェがここに来ることもおかしな話だ。
ここは宵闇堂というギルドのたまり場で、表向きはただの酒場経営を兼ねた弱小ギルドのように見える、が。その一方でアサシンギルドからの密命のようなものを請け負うような仕事をすることも多いのだ。
もちろん公にしている話ではないが、ここに時折出入りするアシェもそのことは知っていた。
「大体、こんな昼日中から司祭が酒場に出入りなんかしてたら、駄目だろうが」
言いながら空いた酒瓶を揺らして見せれば、アシェは頬を膨らませる。
「僕は友人に会うために、友人のギルドに遊びに来てるだけだよ!昼日中からお酒を開けてるのはG2のほうでしょ!」
「俺に会いに来たのか?そりゃご苦労だな、じゃあもう会うっていう目的は達成されだろ?」
「もう!どうしてG2はそうやって意地悪をいうのさ!僕は君にも会いに来たけど、プランドやマチさんにも用があるんだよ!」
「プランドとマチエールに?今日は二人とも借りに行ってて帰りは遅くなるって言ってたぞ?」
G2は言いながら、ギルドメンバーの予定表の書かれた黒板を見る
確かにマチエールとプランドの名前の部分は不在と書かれていた。
「なんだあ、そうかあ」
「俺たちに用事って何?」
G2がきけばアシェはちょろちょろっと酒場の入口へ向かう
「ほら、早くおいでよ」
「ええっ、でもいいんですか?ここ酒場ですよね?」
「いいんだよ、ここは僕の親友がマスターをしている溜り場なんだから」
「先輩の親友ですか?」
そんなやり取りが入り口から聞こえる。
アシェが誰かを連れてきたのか、年若い少年の声
そのやり取りに誰が親友だ。
と突っ込みたくなる。
そば楽して、そのもたもたした子供をアシェが手を引いて引きずるように連れてきた
そして、ニコニコと俺の目の前に立たせて。
「この子!今日から僕の後輩で僕が指南して面倒見ることになった僕付のアコライトだよ!マグノリアっていうの!」
かわいいでしょう!と押し出された子供は確かにアコライトの服を身に纏い、おずおずとこちらにお辞儀をした。
「は、初めまして」
ころころと転がる鈴のような声は確かに聖歌を歌わせたならそれは美しい神への捧げものになりそうだと思う
しかし、そんなことよりも俺が驚いたのは
柔らかな癖のあるグレーの混じった銀の髪、そして透き通るような白い肌と右目は深い藍色の瞳、それだけならなんということはない見目の美しいお稚児さんにでもされていそうなきれいなかわいいアコライト、だがその右目に宿る虹色の滴
それは深い藍色の中に煌く虹の欠片のように澄んだ輝き
昔々、その世界樹の滴を浴びた魂はその恩恵を受け取り、銀の髪と虹の瞳を持って生まれてくるといわれている。
「へえ、本当にいるんだ?」
G2はしげしげとマグノリアを見つめた。
「でも、君ただの人間なんでしょう?」
G2の問いかけに、マグノリアは困った顔で見上げればアシェが
「あたりまえだよ!ノアは普通のかわいい男の子だよ!」
「ノア?」
「マグノリアだからノア」
「ああ、そう。変なところで省略するねお前」
「えへへ」
「いや、ほめてないんだけど、でも。ふうんなるほどね」
虹の滴と呼ばれる子供、奇跡の瞳
一部地方では不吉の象徴とも呼ばれ、又ある文献にはその体には未知の力が秘められていて、その肉を食い体の一部を身に着ければ不老の力または幸運を身に着けることができるという言い伝えもある。
アシェが所属するギルドは一般的なギルドだ
もちろん彼お所属するギルドのメンバーはこんな天然素材のアシェが過ごしていけるほどに人も良く環境もいい、だがノアを守るためには力が足りない
何かが起きたときに対処できないばかりか、誰かが犠牲になるような事態も想像できる
「なるほどね」
G2はもう一度言う
「君は、俺たちを巻き込もうって魂胆なんだね?」
G2がアシェに問いかければ、アシェは小さくうなずいて
「だってG2やプランドならきっと僕の願い事を聞いてくれると思って」