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第四話
ベットの中でシーツだけを身に纏い、アシェがふくれっつらで俺を見る
「仕方ないだろう、急にタナトスの調査隊に加われってプロンテラ騎士団から依頼が着たんだから」
折角アシェの誕生日を祝おうと、色々と準備しておいたのに、怒こりたいというより泣きたい気分の俺は
カチャカチャと鎧を身に纏い、準備を整える。
まだ未知のダンジョン調査だから、回復と、もてるだけの属性武器と対応できる鎧
闇はいるかなー…要らないかなあ…
凹みながらも、準備を進めていく
「タナトスって、最近見つかったダンジョンでしょ?」
アシェが眉を寄せてベットの上から俺を見上げ
「この間、調査隊がいって帰ってこなかったってきいたよ?」
心配そうに顔を曇らせる
「大丈夫だよ、今回は王命なんだ、メンバーも粒ぞろいで、精鋭ぞろいなんだから」
愛しい恋人の、さらさらの銀の髪に指を絡ませれば
「ちょっとまってね」
するりと、ベットから飛び出し白い裸体のまま隣の部屋に向かい
いや、俺達の家なんだからいいんだが
目のやり場に困るぞ…アシェ
暫くして、アシェは銀の指輪を差し出した
「ゲイン…これもっていって」
「?銀の指輪?名前が入ってるじゃないか、どうしたんだこれ?」
クリスマスリングの名前要れサービスの時期には、まだまだ早い
「んん…本当は、何年か前のクリスマスに君に告白しようと思って、用意してたんだけど渡せなくてずっとおいといたんだ
お守り代わりにはならないかもしれないけど、もっていって?」
照れた様に言うアシェが、堪らなく愛おしくて、ギュウと抱きしめる。
「直ぐに帰ってくるから、部屋散らかすなよ?」
耳たぶを、甘噛みして、頬にキスすれば
「やだよ、ゲインがかたずけてくれなきゃ…散らかされたくなかったら早く帰ってきなよ」
くすくす笑い、俺の背中に腕を回す
「それに…かたずいた部屋って一人なのがわかってイヤなんだもん」
俺の鎧に身に纏った胸に、おでこをつけて小さく呟く
そう、一緒に暮らしてみて判ったことだった
アシェは、一人になるのを嫌がる傾向がある、病的とまではいかないにしろ
以前、どうして部屋がかたずけられないんだと、怒ったときに
綺麗にかたずいた部屋だと、独りぼっちにされてるみたいで落ち着かないといっていた
その証拠かどうか、俺が家にいるときは其れなりに部屋は綺麗に使っているくせに
遠征などで帰ってくるとぐちゃぐちゃになっているのが常だった。
疲れた身体で、部屋をかたずけるのはキツイのだが
自分を待っててくれてる証拠だと思うと、それも愛しくなってしまうから
恋人馬鹿なのかもしれない
「了解、じゃあ、急いでいってくるよ」
ペコペコに荷物を積んで、携帯食料、回復剤、それからアシェのくれた指輪をつけて
玄関で、彼の柔らかな唇にキスを落とし
「いってらっしゃい!」
手を振る、アシェにみおくられて、俺は出かけていった
帰ったら約束の苔桃パイを焼いて誕生祝を仕切りなおさなきゃな
そんなことを考えながら。
第三話
目の前に突如湧いた、ジョーカーに属性を乗せた武器を持ちかえ、ピアースを放つ、後方で鉄鎧の足音が聞こえれば、向きを変え、マグナムブレイク
支援にタゲを移さないように立ち回り、しかし遠距離攻撃は、死角からであったため。
「っつ……!」
アシェの肩口に矢が突き刺さる。
「アシェ!!」
彼の前に回り込み、ブランディッシュスピアで敵を凪ぎ払い、タゲを自分に移すも、即座にかけられたキリエとニュマにより、レイドリックアーチャーからの攻撃を免れ、大きく槍を持ちかえピアースを放てば、アスペルシオとレックスエーテルナが流れるように詠唱され、俺の槍の前に敵は倒れる、直後横湧きしたカリツをアシェがターンアンテッドで葬り。
ようやく、一息着いた。俺は、アシェの元に戻り傷を確認する。
詠唱途中で、無理矢理抜いたのか、傷口が抉れていた。
「馬鹿だな、何で先にヒールをしないんだよ」
アシェが魔法で自己回復を行うのを、妨げられないように、槍を構えたまま痛そうに言えば
肩を押さえたままで、ヒールを唱え
「だって、ゲインまで怪我したら嫌だったから…」
そんなことを言う。
「嬉しいけど、俺もアシェが傷つくのいやだぞ?」
苦笑い浮かべ、額をつつけばアシェは笑い
「僕達、両思いだね!」
と、ズレたことを言う。
アシェの相方宣言を貰って以来、俺とアシェは少しずつレベルを上げ、いまでは上級狩場と言われるグラストヘイムにも、立ち入れるようになっていた。
「とりあえず、大まかに治ったから、今日はもう帰ろうか?」
破れた法衣の隙間から、ふさがった傷をみて、安堵し。
「そうだな…」
俺が答えれば、アシェは転送の魔法を唱えワープポータプルを開いた、周囲に敵が居ないことを確認して、ソレに飛び乗り、アシェも又即座にポタにのり転送門は閉じる。
「じゃあ、また明日ね」
いつものように、清算をすませ、帰ろうとするアシェの腕を、何となく掴む
「っ…」
ヒールでは完全に完治しきれなかったようで、痛そうに眉寄せ
「ゲイン…?何?」
軽く首を傾げて、俺を見上げ、俺はというと、清算中から考えていたことを口にする。
「今夜、お前の家に晩飯作りに行ってやるよ」
青い目がこぼれたそうなほど、見開かれ、きょとんとした顔でアシェは聞き返す
「何で?」
「何でっていうか、不便だろ?お前、面倒だからって、手当てもせずに飯も食わずに寝るつもりだろ?」
そう、以前にもアシェが具合が悪くなったとき(その時は、酔っぱらいだったのだが)家に行ったら、こいつは見た目に反してモノグサで、部屋は散らかり放題、冷蔵庫は空っぽという、生活能力にかける生活をしていたのだ。
「え~?ゲインすごいね、買い出しも面倒臭いから、シャワーして寝るつもりだった」
あぁ…やっぱり…
「でも、今部屋汚いからなぁ、見られるの恥ずかしいなあ」
「お前の部屋の汚いのなんか、今更だろう」
初めの頃は、早く嫁さん貰ってかたずけて貰え、等と言っていたけど、今となっては他の奴に、こいつの部屋は上がらせたくないというか、アシェだって俺が作る飯が旨いって言ってくれるし…
天国の父さん、母さんゴメンなさい。
息子が好きになった人は、男子です………。
片思いだけどね………。
そんな懺悔を胸の中でしていると、アシェがとんでもない事を言い放つ。
「ゲインは僕の恋人みたいな、ものだから、まぁいいか!」
思わず、歩みを止めて、溜め息をついた。
人が、相方の位置でいようと、日々堪え忍んでいるのに、そういうことを言うのか、こいつは!
「俺たちの関係は、相方だろ?恋人だったら、そういうことをしなくちゃならんだろうが」
平静を装って言ったつもりだったが、アシェの次のセリフでポーカーフェイスは掻き消えた
「僕、…ゲインとだったらいいよ…」
アシェの顔が赤かったのは、夕日のせいだけではなかったと思う。
清算後の帰路が次の日から、同じになり、西門でゲインがアシェを待つことも、その日を境に無くなった。
代わりに、噴水横の民家から、ペコペコの背中に乗せられた眠そうなプリ
と、騎士が連れ立って出かける姿が毎朝見られるようになった
あの日まで……。
第二話
いつもと同じ場所。
約束なんて、したことはなかったけど
狩が終わって、君と交わす
「又明日」
の約束が嬉しかった。
あの出会いの日から、半年。
いつものように、朝の10時にはプロンテラ西の門の側に立つ
アシェはいつも寝坊して、ここにたどり着くのはいつも11時前
寝癖でボサボサになった髪を、手櫛で整えながら走ってくるのが毎日の恒例だった。
石をくみ上げられて作った、門に寄りかかり
胸元の冒険者昌を見れば、早いもので、もう直ぐJOB50になろうとしていた。
今日当たり転職しようかな
そんなことを考えながら、ぼんやり空を見上げると
聞きなれた声が日々いいてきた。
「だから、今日は待ち合わせしてるっていってるだろ!」
人々の雑踏の中でも、聞き分けられるほど慣れ親しんだボーイソプラノ
「いつもそういって、俺達の誘いを断るじゃないか!たまには俺達と出かけたっていいだろう?」
声がするほうを見れば、アシェが数人の男に囲まれて、言い合いをしているのが見えた。
穏やかとはいいにくい雰囲気に、直ぐ側の花売りの少女が、居心地悪そうにしている。
「まあ、まあ、落ち着きなよガルム」
ガルムと呼ばれる、クルセイダーをクリエイターが、制する。
「僕達は、アシェがどんな人と最近出かけてるのか、気になってるんだよ?だって僕達の狩には起こしに行くまで起きない君が
自力で起き出して、毎朝でかけるなんて、気になるじゃないか」
アシェは俯いて
「ごめんなさい、朱里に心配させて」
俯くアシェを見れば
「朱里には、殊勝なくせに、俺には食ってかかるよなぁ、お前は…」
溜め息をつきながら、ガルムはアシェの頭をわしわしとなぜる。
「ガルムの言い方がきついから、アシェだって、頑なになるんだろ?」
傍に立つ赤毛のプリーストが呆れながら言えば、アシェは三人を見上げて
「皆に言わなかったのは悪かったけど、僕だってもうすぐJOB50になるし、相方がいてもおかしくないだろ?」
俺は三人を遠巻きに見ながら、アシェの言葉を反芻する。
相方っていった?
それってやっぱり俺の事だよね?
アシェは俺の事相方としてみてくれてるんだ?
嬉しくなって頬を緩めながら俺はアシェ立ちに歩み寄り、声をかけた。
「遅いぞ、アシェ」
アシェと、彼を囲む男たちが振り返り俺を見る。
「ゲイン!」
アシェは嬉しそうに、手招きし、俺を呼んで彼らに紹介された
「皆に紹介するね、僕の相方のゲイン、騎士志望なんだよ、ゲイン。この人たちは僕が所属してるギルドの仲間なんだ、マスターでクリエイターの朱里に、副マスターでプリーストのアルファルファ、ギルメンのクルセイダーのガルムだよ」
それぞれをさしてアシェが紹介してくれる。
「初めまして」
相方と言う括りにくすぐったさを感じながら、頭を下げれば
「けっ!まだ剣士じゃねぇか」
と、クルセイダーが毒づく、カチンとしてクルセイダーを見上げれば、隣に立つ赤毛のプリーストがクルセイダーの後頭部を叩き。
朱里と呼ばれたクリエイターは俺の前に立つ、そして
「君、所属ギルドは?」
突然のクリエイターの問い掛けに、先ほどのクルセイダーの暴言に腹をたてかけたことも忘れて素で答え。
「え?まだ決まってないですけど」
直後、クリエイターは俺の腕をつかんで持ち上げた
「ギルメン一人ゲット~♪」
この日が、俺が君の相方として意識しはじめた日。
君と同じエンブレムを着けて、君の隣に立つ俺は、まだまだ駆け出しの冒険者だったけど。
自分の剣で、護れる誰かが居ることが誇りになることを、知りはじめていたんだ。
この人の噂は、新入りのアコライトの中でも有名だった。
破天荒の問題児、だけど大聖堂で語られる様々な古い聖歌を歌い奇跡の御業を扱える数少ないハイプリースト
今はプロンテラ騎士団からの要望に応え凄腕の冒険者とパーティーを組んで様々なダンジョンの視察や探索に協力していると聞く。
そんなエリートともいえる彼女がなぜこんな処で涎を垂らして寝ているのか?
辺りを見渡せば、雑草と呼べそうな草はほとんど生えておらず、奇麗に整えられている。
今日のお勤めはどうしたものだろうか?
この人は何でこんなところで寝てるんだろう?
様々な疑問が頭をよぎり、つい声をかけてしまった
「あの。ここで何をしているんですか?」
どうやら自分の声は彼女の耳に届いたらしく、その瞳が開かれれば、湖畔を移したような奇麗なグリーンの瞳が、自分を映していた。
「あれ?天国?」
寝ぼけたような彼女は、法衣の袖で口元から垂れていたよだれをふきながら辺りを見渡す。
「天国じゃないです、マーガレッタ・ソリンさん」
自分が名前を呼べば、彼女は目をパチクリとさせて聞いてきた。
「どうして君が私の名前をしっているの?君は誰?」
どこかで会ってたっけ?とこ首をかしげる彼女に、否定をする
「自分は、せくらっていいます。マーガレッタさんに直接お会いしたことはありません、初対面ですけど、マーガレッタさんのお噂は僕たちアコライトにも有名ですから」
「噂?」
かばっと起き上がりこちらを見つめる
「噂ってどんな噂?!」
破天荒で…と続けようとしたとき、子猫の泣き声が聞こえた。
マーガレッタさんはきょろきょろと周囲を見渡せば、その声は自分たちが今立つ大きなオークの樹の上からであった。
「あら、降りれなくなっちゃったの?」
彼女はそういうと、法衣のスカートの裾をまくる
「!えっ!!何してるんですか?!」
慌てて止めようとするが
「何って、あの子助けないと、きっと自分で降りられなくなっちゃったのよ」
言いながら、するすると彼女は木の上に登って行ってしまった。
そして、今現在である。
木の上で泣く子猫をつかんで、彼女はダイブした!
「ちょっ?!まあああああっ?!!!」
自分の悲鳴に似た声が裏庭に響き渡る。
まあ、結果から言うと彼女も猫も無事だった。
着地に失敗したものの、子猫だけは無事に助けて、擦り傷だらけになった彼女に自分は覚えたばかりの癒しの魔法をありったけかけた。
「ありがと、もう大丈夫だよ?」
本当にありったけの癒しの魔法をかけて、息切れしている
覚えたばかりのアコライトの癒しの技をかけてもらうより、自分でぱぱっとヒールした方がきっと痛みも回復も早かっただろうに、自分の癒しの魔法を止めることなく受けてくれた。
優しい人だと気が付いたのは、少し座って精神力が回復した頃
静かに黙って横に座る彼女に、なんとなく聞いてみたのは、本当につまらない事
「あの」
「ん?」
自分の問いかけに、彼女は小首をかしげて聞き返す。
「ここ、この場所。もっと草ボーボーで廃墟みたいになってたと思うんですけど
どうしてこんなに奇麗なんでしょうか?」
「ああ、ここは私の大好きな場所なの、私が大聖堂に入ったときからこっそり過ごす秘密の隠れ家みたいな場所で、この大きなオークの樹も私のお気に入りのお昼寝場所なの、数年ぶりにプロンテラに戻ったら草がたくさん生えてたから、ちょちょっと刈り取ってみたのよ」
と、法衣の袖から魔法を凝縮したスクロールと呼ばれる羊皮紙を見せてくれる。
そこには、風の魔法と大地の魔法、炎の魔法があり、多分風の魔法で雑草を刈り取り、炎で焼いて、大地に戻したのだと予想された。
「うん、だからせくらの仕事も今日はもう終わり、ねえ。それより聞かせて!」
「な、何を?」
「私の噂!アコライト君たちの中で、私はどんな風に噂になっているの?」
だから、そういうところが破天荒だって噂になっているんです……
多分自分はそう言った。
そういったはずが、言葉にならなかった。
何故なら……。
さわさわと響く葉擦れの音
瞼の上に落ちてくるはまぶしい朝日と、涼やかな川の流れる音で、意識が浮上する
ぼんやりとした視界に広がるのは、深い緑の木々
しかし、大きなオークの樹ではなく、まだ若い枝葉を連ねる小さな林と、すぐ側に流れるのは奇麗な小川の水
そう、ここは大聖堂の大きな裏庭ではない。
首都プロンテラから西に少しいった、郊外の川の側
初心者向けのダンジョンやカプラコーポレーションのサービスも受けられる小さな集落弛。
自分はここを拠点とする小さなギルド『はっぴーらいふ』のマスターをしている
アークビショップのせくら。
朝日を受けて柔らかく光るシルバーブロンドと空色の瞳、トレードマークの銀髪の上にふわふわと揺れるのはお気に入りの真っ白な天使のHB
「うーーーーん……」
軽く伸びをして起き上がれば、すぐ横で眠っていたギロチンクロスが目を覚ましたようで起き上がった
「おはようございます、せくらさん」
「ん、おはよう」
俺はそのまま目の前の小川に頭を突っ込んで顔を洗う
「ぷはーーーー!」
ぶるぶると頭を振り回せば、銀色の髪が水しぶきを飛ばした。
「もーせくらさん、何でそう大雑把なのかなあ」
見た目だけは人形みたいなのに
などと文句を言いながらタオルをわたしてくれたギロチンクロスは昔ノービス時代にうろうろしていた処を拾ったところ、いつもまにやら俺に追いつき追い越しして三次職のギロチンクロスに育ってしまった。
ギロチンクロスのくせに赤い髪に一房白髪、っていう派手な見た目の上目の色まで赤いっていう、忍気が全くない見た目の暗殺者。
「そういえば、せくらさん寝言言ってましたよ?」
「寝言?」
「あんまりよく聞き取れなかったんですけど、破天荒がどうとか?」
「破天荒……」
その単語で、先ほどの夢のワンシーンを思い出す。
ざざっと
たまり場の木の葉が風になびいた。
まるで、夢の中のオークの幹が自分に囁いたように