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「せくらさんが嫌なら、俺なかったことでいいです、困らせてしまってごめんなさい」
そんな風に謝る守門
「ちがう!嫌じゃない!!」
そんな風に言い出す守門の言葉を俺はさえぎった。
咄嗟に声を出したは、いいがその先の言葉を考えてはいない。
ど、どうしよう……。
ろ、だらだらと、冷や汗が背中を流れる。
いつものようにふざけたり茶化したりしたら絶対ダメなところだここは。
あうあう、と言葉にできずに口をパクパクさせて、相手の顔を見れば、困ったようにこちらを見下ろしていた。
そうだ、いつの間にかこいつのほうが背が伸びて、いつのまにかこんな風に。
でもそれが恋情の混じったものになっていたのはいつからだったんだろう。
そんなことも気にせずに、俺は!
「あ……あの、せくらさん?」
「う、あう……」
どんな気取った言葉を探しても出てこない、高速詠唱、高INTのこの頭はいまはただの飾りか!
ふと、先ほどのレイさんの言葉が頭によぎる
『「せくら君がいいとか悪いとかより、どうしたいか、じゃないですか?」』
そうだ、今までの俺のことはもうしょうがない!
気が付かなかったのも、事故みたいなものだ!たぶん
でも、ちゃんと気持ちは言わないと。
「あ……あのな、守門の事を今すぐに恋人のように思えとか、恋愛対象にしろっていうのは、まだ無理で……」
チラチラと相手の顔を窺いながら
「でも、お前と狩りに行くのは楽しいし
お前がAGI型で敵かき集めて、ばーーーーーっと俺がME引くのはすごく楽しい!
だからお前が餌係として敵かき集めて狩りするってスタンスはすごく楽だし、俺は大好きだ、だからじゃあお前と恋人じゃなかったからほかのAGI型ギロチンを探して同じように狩りできるかとか、楽しい時間作れるかとかは無理だと思う」
ここまで一気に言えば、守門は黙って俺を見ていた。
「だから、ほかの人と出かけるのとはお前と出かけるのはまた違くて、でも恋愛対象とかはまだ難しいっていうか、そこまでの気持ちかって言われると、だから……」
「はい」
たまり場のそばを流れる川の音がやけに耳に響く
「あの、あのな」
こんな風に誰かに言葉を伝えるのは、いつぶりだろう
目線が下に行き、自分の足元を見る
「恋人とかは、ちょっとまって欲しい、とりあえずっていうか、今更だと思うけど
俺と、相方になってくれませんか?」
うううう……恥ずかしい
穴ほってうまりたい
だって、自分でスルーしておいて、やり直しって
色々最悪だ
だけど、この人とこれっきりとか、離れるとか
一緒にいられなくなるのとかは嫌った
我儘かもしれないけど、これが今の俺の気持ち
今はただ、隣に立っててくれないだろうか?
ちらりと、顔を上げて相手を見れば、呆けたような顔をしていた
「え?す、守門?」
俺がおそるおそる声をかければ、我に返ったように瞳に色が戻る
「はっ!あ、すみません!」
「い、いや。どうした?俺の話聞いてた?」
「聞いてました!聞いてました!予想と違っていてそれで驚いてしまって、すみません」
「予想と違うって……?」
「いや、だってせくらさん走って逃げちゃったから、そんなに俺のこと嫌いなのかと思って、恋人とか考えてなかったのかと思ったらショックだったんですけど、でもこんな感じになってしまったら、俺ここのギルド居ずらいじゃないですか、だから瀬倉さんが帰ってくるの待ってたら、ひと声かけて明日の朝にはこのギルド抜けようかと思ってたんです」
あぶなかった!!
レイさんに言われてちゃんと言えてなかったら、もう会えなくなるところだった!
明日にでも菓子折りもって届けに行こう
そんな方向に思考が横滑りする
「えっと、それじゃ。」
守門が困ったように言う
「うん」
俺もそれに答えれば
「これからもよろしくお願いします、せくらさん。
せくらさんが楽しめるように、これからも俺!餌係頑張りますね!」
笑顔でそういう彼に、俺はほっと胸をなでおろす
「それに、『まだ』ってことは、これからだって期待できるっていうことですよね」
ぽつり零された守門のつぶやきは、さらさらと流れる川の流れに乗って
俺の耳には届かない
「守門の誕生日に守門がギルド脱退になんてならなくてよかったよ」
「ほんとですねー」
「さってと!そろそろ寝るかー」
軽く伸びをして、空気を換える。
月は大きく傾いて、太陽の光がうっすらと東の空を明るくし始めてはいるけれど、あと二時間ぐらいならきっと寝れるだろう
そう思いながら、いつものように木立に寄りかかり毛布をかぶる
いつもは少し距離を取って寝る相方が、今日は背中をくっけているのがなんだかくすぐったかった。
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誕生日の風景完結です!
なんかすみません!
うわあああ、なんか恥ずかしい!
はずかしいよ!せくらさんが!
初々しい二人の第一歩
ここでくっつけちゃうのもありかと思ったんですが、なんか告白とかもっと丁寧に書きたかったので、まずは相方ってことでひと段落させてみました。