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「もしかしてマーガレッタさんは、ノア先輩を知っているんですか?」
疑問をそのまま口にすれば、軽やかな笑顔で答えられた
「もちろん!よく知っているわ!」
もしかして、ノア先輩の後見人の先輩が、実はマーガレッタさん?!
だとしたら僕は先輩の先輩に話を聞いていることになる!
一瞬の興奮はすぐに終了した
「あ、せくら。ノア君の先輩が私じゃないかって思ってるでしょう?」
こくりと頷き
「はい、違うんですか?」
「残念」
ふふふ、っと悪戯が成功した時のような顔で笑う、マーガレッタさん
「違うのよ、私はノア君の先輩とライバルですごく仲が良かったの」
笑いながら答えを言う
「アシェって言ってね、そういえば、せくらによく似てたなぁ、銀の髪とか青い目とかと見た目が、雰囲気はせくらのほうがしっかりしてそうだけどね」
「僕に似た人ですか?」
「うん、ノア君はアシェの事が大好きだったの、だからアシェにそっつくりなせくらの事が嫌いなはずないわ」
「そうでしょうか」
そうは言われても納得はできない、そもそも、自分はそのアシェという人を知らないのだ。
「それに、多分ノア君は自分の持ってる技術をせくらに教えたいんだと思うわ、今のせくらのステータス見せてもらったけど、魔法詠唱の早いタイプになると思う、アシェもそういう子だったから」
「でも、これ全部を覚えて最短で詠唱のできる聖歌に組み替えろなんて無茶です」
山積みにされた本を見て、再びため息をつく。
もちろん、ヒールや速度増加、ブレッシング等基本的な物であればアコライトの中では自分は群を抜いて早い、だが先輩のわたしてきた本のなかには、本来アコライトが修行するものではない、プリーストになってから覚えるであろう聖歌が多く含まれていて、そのなかに退魔用のマグヌスエクソシズムまであった。
先輩自体は退魔型プリーストではない、なぜ自分にこれを読めと伝授するのか分からなかった。
そんな風に困惑する俺をみて、マーガレッタさんはいたずらっ子がするような目で立ち上がり、スカートの裾を翻して俺の前に立ち
「見てて!」
彼女がポケットから青石をいくつか取り出し、かざせば途端に青く光りだす。
詠唱が始まっているのだと気が付いたのは、地面に輝く魔法陣が広がった時。
と、同時に光の泉が地面に広がる。
先ほどまでここに本を抱えて歩いてきて削られた体力が癒される。
いくつもの魔法を瞬時に詠唱し終えていた。
まるで、詠唱時間ゼロに感じさせる技術。
目を見張り、彼女を見た。
「すごいです!マーガレッタさん!」
「ふふ……これぐらいはノア君も出来るはずなのよ?」
「えっ?!あんなチャランポランなひとが?!」
「ノア君は、修行の途中でアシェが亡くなってしまったから、ほぼ独学でそこまで覚えたのよ、ノア君の仕込みなら何も問題はないわ」
「でも……」
自分は何だか納得がいかなくて、どうせなら彼女に教えてもらいたい気持ちになっていた。
しかし、彼女は
「楽しみだなあ、せくらが一人前になったら私と一緒に色々な遺跡やダンジョンを巡るパーティーに入ろうね!」
うきうきと将来について話し出す彼女。
自分は、小さくため息をついて
「僕も、マーガレッタさんみたいになれますか?」
「ん?」
「そんな風に、貴方みたいに立派なプリーストになれるでしょうか?」
「私は、別に立派ではないのよ?
ただ、楽しいことを楽しむようにしているだけ、どんな時でもどんな状況でも、私がみんなを助けるの」
それは、自信に満ちた言葉
「それに、今日せくらに会えてよかった」
「え?」
「私又、暫く調査の依頼が来てプロンテラから離れるの」
「調査って……今度はどこに行くんですか?」
「今回はちょっと遠く、シュバルツバルド共和国のリヒタルゼンという都市なの」
「リヒタルゼン?」
聞いたことのない都市だった。
「あまり、良くない噂が出ているみたいなの……」
その時、明るい笑顔が曇る
「町の人が……次々に消えていくとか、ルーンミッドガッツからの冒険者も何人も行方不明になっているとか……」
「えっ?!そんなところに行って大丈夫なんですか?!僕が心配すれば」
ぱっと顔を上げて、先ほどの表情は嘘であったかのように
「大丈夫よ!私の相方は最強なんだから!聞いたことない?カトリーヌっていう優秀なハイウィザードなんだから!」
勿論、私もね!
と、マーガレッタさんは笑って言った。
「でも……」
まだ心配な自分に彼女は、んー……と人差し指を顎に当て、そうだ!と両手をたたき
法衣の裾から、一冊の聖書を取り出し
「じゃあ、私からも宿題をだしていくわ!、私が帰ってくるまでにマスターしておいてね?」
そういって手渡された、本の表紙を見れば
「マーガレッタさんこれ、そのⅠってなってるということは、そのⅡがあるんですか?」
そう問いかければ、彼女は笑顔で頷く
「続きはせくらがそれをマスターして、私に再開したときに貸してあげる!」
そして彼女は、自分が首からかけていたロザリオを僕の首にかけ
「せくらに多くの幸があらんことを!」
そう言って笑い、そして彼女は旅立ったのだ。
一冊の本とロザリオを残して。
それから僕は、毎日のお勤めとノア先輩からの宿題にと、日々をが忙しくな不がれていく中にマーガレッタさんのことは忘れてしまっていたのだ。
「そういえば、あれから全然彼女の話を聞かないけれど、どうしているのかなあ」
今はもうアコライトではなく、アークビショップとして彼女よりも高い地位に立つ自分。
あの頃託された宿題も、今では理解できていた。
久々に、あのオークの樹の庭にでも行ってみようか……。
などと考えながら、夕食の片づけも終わり、紅茶をいれていると目の前の守門が険しい顔をしていた。
「何?俺の思い出話でなんでそんな険しい顔してるんだよ」
俺が頭の羽を揺らしながら聞けば
守門はその赤い瞳を細めて、重苦しい表情で俺を見た
「せくらさん……リヒタルゼンっていいました?」
「ああ、大昔だったから聞き間違いだったかもしれないけど、たしかリヒタルゼンっていってたとおもうぞ」
「……そのリヒタルゼンで消息を絶っていると言われて調査対象となっている、冒険者の方の中に、その、マーガレッタさんの名前があったかもしれないです」
マーガレッタさんはたいていいつもその場所にいて、まるで自分の休憩時間を知っているようで、彼女と休憩時間に話をするのが日課になっていたある日。
いつものように、オークの樹の下に向かう自分の両手には、山のような本が抱えられていた。
若干ふくれっ面なのは、ご機嫌斜めな証拠だ。
そんな俺にマーガレッタさ「せくらさん?」
一瞬ぼんやりした俺を守門が心配そうに覗く。
「あ、いや。ちょっと昔のことを思い出したんだ」
まだ自分がアコライトだった頃の事
胸元で揺れる小さなクロスに無意識で指を絡めれば
「そういえば、せくらさん出会った時からそれしてますよね?装備品っていうわけでもなさそうだし、アイテムなんですか?」
「アイテムっていうか、これはお守りみたいなものなんだ、ある人に貰ったものでさ」
ああ、何でだろう?
今日はやけにあの人のことを思い出す
「あの人って?」
興味津々で聞き返す相方
「何?気になる?」
いたずらっぽく聞けば
「はい、きになります」
素直に答えるギロチンクロス
「じゃあ、ちょっと長い話になるけど……」
そういって、朝食の支度をしながら話し始めた
子猫事件のあとも、俺はちょくちょく時間があれば裏庭のオークの樹の下に行くようになった。
んはいつもと変わらない笑顔で
「今日は、せくら」
と声をかける。
「こんにちは、マーガレッタさん」
マーガレッタさんには、申し訳ないと思いながらもむっつりとした表情を変えることができない。
「どうしたの?それ?」
俺の表情や雰囲気に対しては何も言わず、彼女は手の中の大量の本を指して聞いてきた。
「先輩に出された宿題なんです」
若干愚痴も込めて聞いてほしかったので、ため息交じりにそう答える
アコライトは、プリーストになる前に先輩について一定期間の修行をする、その期間の間、通常のお勤め+先輩プリーストが出す様々な問題やお勤めをこなし、その受け持ちの先輩が一人前と認めてくれれば晴れてプリースト試験を受けることができるのだ。
言ってしまえば、その先輩プリーストによって今後の自分の支援スキルなどのっ方向性が決まってくるといっても過言ではない。
支援型で方向の決まりかけている自分だが、いつまでたっても自分の担当をしてくれている先輩プリーストは試験を受けることを許可してくれない。
同期でアコライトになった仲間はもう、どんどんとプリーストとなり上級の冒険者たちとパーティーを組み更に腕を磨いている。
自分だけがいつまでも、教会の下っ端のままだった。
「先輩は自分の事が嫌いなのかもしれません」
マーガレッタさんの横に腰を下ろし、彼女と自分の間に借りた本を積み上げそれを見つめれば自然と、思いが口を滑る。
自分の事が嫌いだから、なかなか認めてくれないのではないか?
最近そんな気持ちが芽生え始めていた。
「どうして?」
キョトンとした表情で自分をみるマーガレッタさん。
そのエメラルドのような瞳をみていたら、心のなかのくしゃくしゃした何かが解けて、つい言葉を零してしまう。
「だって、自分の動機はとっくにプリーストになってて、それなのに僕はいつまでたってもアコライトのままで役立たずだし、先輩に試験を受けさせてくださいって言えば、お前はまだまだだから駄目だって言うんです」
さわさわと鳴る梢の音。
じんわりと目の奥が熱くなって、涙が零れそうになるのを、できるだけ目を開いて堪えた。
さすがにここで泣くのは格好悪すぎる。
マーガレッタさんはしばらく黙ってから
「せくらの冒険者証を見せてもらっていいかな?」
マーガレッタさんに言われるままに、冒険者になったときに配布されたそれを見せた。
懐中時計型のそれには、様々な情報が詰め込まれている。
例えば、、ギルドに所属すればギルドチャットが使え狩りに行くときにパーティーを組めばパーティー間の会話ができ、又倉庫の鍵や、自分の身分証明書、ステータスなどを表示されていた。
暫くそれを見ていた彼女は、冒険者証を返してくれた
「その先輩ってどんな人?」
マーガレッタさんは首をかしげながら問いかける。
「ノア先輩の事ですか?」
俺は急に尋ねられたので思わず名前を出してしまった。
名前を聞いたところで、マーガレッタさんが知るはずないよな、と思っていれば、その反応は意外で、その名前を聞いた彼女は嬉しそうに聞き返した
「せくらの先輩は、ノア君なの?」
若干驚きながらも、答える
「はい、傍若無人で人の話は聞かなくて、いつも司教様や大司教様に怒られてばかりのノア先輩……いや、マグノリア先輩です」
本人は木蓮という花を意味する、マグノリアのいう名前が好きではないらしく、周囲にノアという略称を定着させているが、あえて本人確認のために本名を出す。
「そっか、ノア君が……。彼がもうアコちゃんを任されるようになったんだね」
感慨深そうに、そして嬉しそうにマーガレッタさんは言う
「せくらさんが嫌なら、俺なかったことでいいです、困らせてしまってごめんなさい」
そんな風に謝る守門
「ちがう!嫌じゃない!!」
そんな風に言い出す守門の言葉を俺はさえぎった。
咄嗟に声を出したは、いいがその先の言葉を考えてはいない。
ど、どうしよう……。
ろ、だらだらと、冷や汗が背中を流れる。
いつものようにふざけたり茶化したりしたら絶対ダメなところだここは。
あうあう、と言葉にできずに口をパクパクさせて、相手の顔を見れば、困ったようにこちらを見下ろしていた。
そうだ、いつの間にかこいつのほうが背が伸びて、いつのまにかこんな風に。
でもそれが恋情の混じったものになっていたのはいつからだったんだろう。
そんなことも気にせずに、俺は!
「あ……あの、せくらさん?」
「う、あう……」
どんな気取った言葉を探しても出てこない、高速詠唱、高INTのこの頭はいまはただの飾りか!
ふと、先ほどのレイさんの言葉が頭によぎる
『「せくら君がいいとか悪いとかより、どうしたいか、じゃないですか?」』
そうだ、今までの俺のことはもうしょうがない!
気が付かなかったのも、事故みたいなものだ!たぶん
でも、ちゃんと気持ちは言わないと。
「あ……あのな、守門の事を今すぐに恋人のように思えとか、恋愛対象にしろっていうのは、まだ無理で……」
チラチラと相手の顔を窺いながら
「でも、お前と狩りに行くのは楽しいし
お前がAGI型で敵かき集めて、ばーーーーーっと俺がME引くのはすごく楽しい!
だからお前が餌係として敵かき集めて狩りするってスタンスはすごく楽だし、俺は大好きだ、だからじゃあお前と恋人じゃなかったからほかのAGI型ギロチンを探して同じように狩りできるかとか、楽しい時間作れるかとかは無理だと思う」
ここまで一気に言えば、守門は黙って俺を見ていた。
「だから、ほかの人と出かけるのとはお前と出かけるのはまた違くて、でも恋愛対象とかはまだ難しいっていうか、そこまでの気持ちかって言われると、だから……」
「はい」
たまり場のそばを流れる川の音がやけに耳に響く
「あの、あのな」
こんな風に誰かに言葉を伝えるのは、いつぶりだろう
目線が下に行き、自分の足元を見る
「恋人とかは、ちょっとまって欲しい、とりあえずっていうか、今更だと思うけど
俺と、相方になってくれませんか?」
うううう……恥ずかしい
穴ほってうまりたい
だって、自分でスルーしておいて、やり直しって
色々最悪だ
だけど、この人とこれっきりとか、離れるとか
一緒にいられなくなるのとかは嫌った
我儘かもしれないけど、これが今の俺の気持ち
今はただ、隣に立っててくれないだろうか?
ちらりと、顔を上げて相手を見れば、呆けたような顔をしていた
「え?す、守門?」
俺がおそるおそる声をかければ、我に返ったように瞳に色が戻る
「はっ!あ、すみません!」
「い、いや。どうした?俺の話聞いてた?」
「聞いてました!聞いてました!予想と違っていてそれで驚いてしまって、すみません」
「予想と違うって……?」
「いや、だってせくらさん走って逃げちゃったから、そんなに俺のこと嫌いなのかと思って、恋人とか考えてなかったのかと思ったらショックだったんですけど、でもこんな感じになってしまったら、俺ここのギルド居ずらいじゃないですか、だから瀬倉さんが帰ってくるの待ってたら、ひと声かけて明日の朝にはこのギルド抜けようかと思ってたんです」
あぶなかった!!
レイさんに言われてちゃんと言えてなかったら、もう会えなくなるところだった!
明日にでも菓子折りもって届けに行こう
そんな方向に思考が横滑りする
「えっと、それじゃ。」
守門が困ったように言う
「うん」
俺もそれに答えれば
「これからもよろしくお願いします、せくらさん。
せくらさんが楽しめるように、これからも俺!餌係頑張りますね!」
笑顔でそういう彼に、俺はほっと胸をなでおろす
「それに、『まだ』ってことは、これからだって期待できるっていうことですよね」
ぽつり零された守門のつぶやきは、さらさらと流れる川の流れに乗って
俺の耳には届かない
「守門の誕生日に守門がギルド脱退になんてならなくてよかったよ」
「ほんとですねー」
「さってと!そろそろ寝るかー」
軽く伸びをして、空気を換える。
月は大きく傾いて、太陽の光がうっすらと東の空を明るくし始めてはいるけれど、あと二時間ぐらいならきっと寝れるだろう
そう思いながら、いつものように木立に寄りかかり毛布をかぶる
いつもは少し距離を取って寝る相方が、今日は背中をくっけているのがなんだかくすぐったかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
誕生日の風景完結です!
なんかすみません!
うわあああ、なんか恥ずかしい!
はずかしいよ!せくらさんが!
初々しい二人の第一歩
ここでくっつけちゃうのもありかと思ったんですが、なんか告白とかもっと丁寧に書きたかったので、まずは相方ってことでひと段落させてみました。
走って、走って。
たどり着いた先はプロンテラ首都郊外の一軒家
深夜だというのにテンパった俺はその家のドアをドンドンと叩いた。
しばらくして
「うるっせえな!何時だと思ってるんだ!新聞の勧誘ならお断りだぞ!!」
くるくるの銀髪を掻き回しながら出てきたのは半裸のハイプリーストが現れる
「って、せくら?!どうしたんだよこんな時間に」
「うわああああん、ノア先輩助けてくださいいい」
「えっ?!えっ?!!何があったんだよ?!せくら!」
俺が駆け込んだ、このハイプリーストは
マグノリア先輩
木蓮を意味するその名前があまり得意でないらしく、本人は略称のノアを周囲に呼んでもらっている。
俺がアコライト時代にお世話になった先輩だ
アコライトは一人前になるまで、一人の先輩の補佐役としてつけさせてもらい、様々なことを学ばされる。
いうなれば、この時に専属になってくれるプリーストによって、その後の聖職者人生が決まってしまうと言っても過言ではない。
高速詠唱を得意とし、様々な大人数のパーティーの支援の要として活躍していた先輩の側にいたから、今の俺が武器としている高速詠唱スキルや立ちまわりを覚えたと言ってもいいのだ。
色々と問題も起こしてくれたが、俺が非常事態に助けを求めるのはいつもこの人だった。
ノア先輩は深夜に駆け込んだきた俺を
何が何だか分からないままにも、家に上げてお茶を入れてくれた。
半裸だったのは、先輩の彼氏との事の真っ最中であったらしい
情報が遅れて申し訳ないが、先輩は男性とお付き合いをしている。
恋人は、AGI型ルーンナイト
プロンテラ騎士団に所属し、どうやら貴族の家の出らしいということしか知らないが、とても仲の良い二人に俺はいつも、正直いいなあと思っていた。
羨やましいというほどでなく、この二人をいいなあと思うのだ。
「えっと、すみませんなんか、そういう時に押しかけちゃって」
俺が謝れば
「まあ、それはいいから!」
さすがに恥ずかしいのか、顔を赤くして怒られる。
「それで、せくら君。どうしたんだい?君がこんな時間にくるなんてよっぽどなんだろ?」
ノア先輩の相方である、レイさんがノア先輩のとなり、俺の斜め前に座って聞いてきた。
さすがに室内なので二人ともラフな普段着だ。
ノア先輩を見れば、話すことを促されるように頷かれ
俺は先ほどの出来事を二人に話して聞かせた。
しばらくの沈黙の後
「そりゃ、お前が悪いわ。せくら」
片目に虹彩の入ったオッドアイの青い瞳が、バッサリと言う
「うう、ですよね」
テーブルに突っ伏して項垂れれば
「大体、付き合おうって言われて、どこに?とかコントじゃないんだから、なあ?」
ノア先輩が傍らの相方にそう聞けば、
「いや、貴方だって昔私が告白したときそんなこと言いましたよ?」
と、呆れたように返されている
「なんていうか、似た者師弟ですね……」
呆れたようにレイさんがいえば、そんなこともあったっけ?とノア先輩は嘯いた
「まあ、なんにせよ」
レイさんは笑って俺を見て
「せくら君がいいとか悪いとかより、どうしたいか、じゃないですか?」
「俺が、ですか?」
両手に挟んだマグカップのなかの紅茶が揺れる
「ええ、せくら君がその、守門君にたいして如何したいか、どうありたいかが重要だと思いますよ?」
「俺、俺は……」
つぶやいて、カップの中を見つめる。
カップの中身は高級な紅茶なのだろう、奇麗な赤色をしていた。
少しだけ、守門の髪色に似ていて彼を思い出す。
「俺、俺は、わからないです。守門のことは嫌いじゃないし、だけどなんか、だって最近まで初心者だったと思ったのに、いつの間にか三辞職になってて、俺の隣にいて……
嫌いじゃないけど、そんな、好きとかは…まだ……」
「なら、そう言ってあげるのが今は一番だと思いますよ」
「そうだぞ、可能性がないわけじゃないことを伝えてやれ!」
ノア先輩とレイさんに背中を押され俺は立ち上がる
「有難うございます!少し納得しました」
「うん、それならよかった、どうずる?たまり場まで送ろうか?」
レイさんがコートを羽織ろうとするのを俺は止める
「大丈夫です、ここからたまり場まですぐですから、このまま歩いていきます」
「そうか、気を付けろよ?」
笑顔で送り出してくれる二人に手を振って俺はたまり場に向かって駆け出した。
銀色の髪と、その上でゆれる天使の羽を見送りながらノアは呟く
「そろそろ、せくらも新しい春が来てもいいころだと思うんだよな」
「そうですね、前の彼氏さんと別れてけっこうなりますっけ?」
「うん、五年ぐらいかな」
「守門君がせくら君のいいパートナーになってくれるといいですよね」
「だなあ」
欠伸をしながらそろそろねるかーと言いながら二人は家の中に入る。
俺はそのままたまり場へ向かえば、川ぺりに守門が座っていた
けっこうな距離があるのに、俺の気配を察したのか振り返り、こちらと視線が合う
「おかえりなさい!せくらさん」
「た、ただいま」
「心配しましたよ、急にポタで駆け出すから」
「う…うん、ごめん」
うう、きまずい
どう言ったものか逡巡していると、守門の方から切り出してきた
「ねえ、せくらさん。
さっきのことなんですけど……」
「う……あの、あのな。その……」
「せくらさんが嫌なら、俺なかったことでいいです、困らせてしまってごめんなさい」
そんな風に謝る守門
「ちがう!嫌じゃない!!」
そんな風に言い出す守門の言葉を俺はさえぎった。
つづきますーー!
続きは今日か明日にはUPします!
2015年冬コミのラグナロクオンラインスペース
サークル名はブログタイトルと同じ「はっぴいらいふ」
スペースは 水曜日(30日)東地区 コ-32b
ある誕生日の風景
ある日のこと
「せくらさん!今夜はチョコレートケーキがいいです俺!」
ギルドメンバーの守門が急に言い出した。
「チョコレートケーキ?」
確かに今日の晩御飯当番は俺だけど
「急にケーキって言われても、材料はないぞ?」
俺がそう言ったら
「大丈夫です!材料俺揃えてきましたから」
差し出された材料は確かに、ブッシュドノエルの材料
「いいけど」
と答えれば、有難うございます!と大喜びだ
こいつ、こんなにケーキ好きだったっけ?
と思いながら、晩御飯にはケーキとケーキに会いそうなものを付け合わせて作る
「ありがとうございます!俺の好きな物ばかり作ってくれてうれしいです!」
「そうか、良かったな」
たまたま作ったメニューが、守門の好きなものだったらしい
それにしても、今日は随分と嬉しそうに食べるなあ
そんな風に思って守門の食べる様子を見守る
日も暮れてきて、ギルドメンバー皆が寝静まったころ、俺も一通りのかたずけを終えて一息つこうと、焚火のそばで座っている守門の横に座った
「かたずけ終わったんですね、お疲れ様です」
「あー、今日は材料がいろいろあったから、多く作りすぎちゃったなー」
ふああ、と欠伸をしながら空を見上げれば、月が頂点に差し掛かっていた
「そろそろ俺も寝ようかな」
俺がそう言うと、守門が、えっ?!と聞き返す
「なんだよ?」
と、怪訝なかおをすれば
「いや、あとちょっと、十分ぐらい一緒にいてくれませんか?」
「あと十分?」
首をかしげて聞き返す
「はい、あと十分したら俺の誕生日じゃないですか、やっぱり恋人に最初におめでとうって言ってほしいですし」
「……えっと、お前の誕生日なの?」
「はい!あれ?いってなかったでしたっけ?」
「……ん。いやっていうか、恋人同士?」
「はい」
「俺と、お前?」
「他に誰がいるんですか?」
静かに川の流れる音が響く
「えっと、いつから?」
「えっ?いつも言ってるじゃないですか」
「えっ?」
言われた覚えが全くない、とクエスチョンマークをとばしていると
「せくらさん、好きですよって俺言ってるじゃないですか?」
確かに言われている、こまごまとちょいちょいと言われているけど……
「えっ?!あれってそういう意味だったのか?!」
「ほかの意味のない単語だと思いますけど」
困ったように言う守門
「ちょっ。まって?いつから?!」
「いつからって、結構前ですよ、まさか自覚なかったんですか?」
「いや、うん。っていうかごめん、本当にいつから……」
どうやら、半年ほど前に守門が
『せくらさん、付き合ってください』
と言っていたらしい
そして俺は
『いいぞー?どこに付き合えばいいんだー?』
というベタな返しをしていたらしい。
「えっ…えええええっ?!」
ちょっとまって!
ちょっとまって!!
急に顔が熱くなる
「せくらさん?」
不思議そうに俺を見上げて聞き返す守門
「ちょっとまって!!!」
叫びながら俺は立ち上がり、思わずポタを開いてその場から逃げてしまった
だって
だって
ちょっとまって!!
だっていつから?!
そんなだったらもっとこう、あったじゃん!
だけど、なんか
そんなんで、ええええっ?!!!
一人テンパりながら俺は、夜のプロンテラの街を駆けまわった